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婦人科ウィメンズセンター

体外受精胚移植法の流れ



1. 卵巣刺激法(排卵誘発療法)

体外受精法を行う上で、重要なプロセスの1つになります。1個の卵子よりも5個、10個と卵子がより多く採れた方が、良質な卵子が採れる確率も高くなります。また複数個の受精卵を得ることで、1回目の胚移植で妊娠不成立となっても毎回繰り返し採卵を行う必要がなく、複数個の受精卵を凍結保存していおけば次回に胚移植が可能です。
妊娠可能な良質な受精卵を複数個獲得する目的で、体外受精法を行う場合は卵巣刺激法を行うことが多くなっています。
卵巣刺激法に用いられるホルモン剤には、卵子を育てる役割のHMG・FSH製剤と卵子の成熟を開始させる作用のあるHCG・LH製剤、自然排卵を抑える作用のあるGnRHアナログ製剤(点鼻薬)・GnRHアンタゴニスト製剤(注射薬)があります。

ショートプロトコール

最も多くの卵子を得られる方法です。月経2日目からGnRHアナログ(点鼻薬)を使用開始し、月経3日目からHMG・FSH製剤の注射を卵胞が充分に発育するまで7~10日間ほど連日行います。人によって卵巣の反応性が異なる為、注射の期間は異なります。点鼻薬は1日2回、12時間おきに両方の鼻にスプレーします。この点鼻薬は、採卵前々日の夜まで続けます。

クロミフェン療法

低刺激法と呼ばれる方法です。通常、月経2~3日目からクロミフェンの内服を開始します。卵胞の発育を経過観察しながら、HMG・FSH製剤の注射を2~5日間ほど併用したり、GnRHアンタゴニストを併用する事もあります。低刺激法の場合、排卵を抑制できない例もあり、院内迅速ホルモン測定にて適切な処置と最適な採卵時期を決定します。

GnRHアンタゴニスト法

月経3日目からHMG・FSH製剤の注射を7~10日間ほど連日行います。卵胞がある程度大きく育ったところで排卵を抑えるGnRHアンタゴニストを開始します。通常、GnRHアンタゴニストは最大卵胞径12-14㎜から投与開始し採卵日決定時まで使用します。

自然周期法

上記のような点鼻薬やHMG・FSH製剤を一切使用せず、自然に発育する卵胞を利用する方法です。自然周期法の場合、排卵を制御できないため、院内迅速ホルモン測定にて適切な処置と最適な採卵時期を決定します。

2. 採卵

採卵とは、卵巣刺激法によって発育した卵胞から卵子を採取することをいいます。HCGの注射後、約36~40時間後に排卵が起こりますから、排卵が起こる前、つまりHCG注射実施日の2日後の午前中に採卵を行います。個人差はありますが、月経周期の11~14日目頃に採卵を行います。当院では痛みを全く感じないように配慮して静脈麻酔を行います。この場合、採卵中は眠った状態になります。麻酔後に超音波診断装置を用いて、経膣的に卵胞を穿刺・吸引して卵子を採取します。所要時間は約15〜30分です。採卵後は麻酔が覚めるまでゆっくりお休み頂きます。下腹部痛や出血が無ければ帰宅することが可能です。

採卵についてご注意

採卵前

  • 採卵前日は、22時00分から絶食・絶飲して下さい。
  • 指定の来院時間(朝8時30分)に婦人科外来にお越し下さい。
  • アレルギー体質や過敏症の方は、あらかじめお申し出下さい。

採卵時

  • 採卵前に膣周囲及び膣内の消毒・洗浄を行います。これは穿刺による感染を防ぐためと膣分泌物による卵子への影響を少なくする為です。膣の奥の方までガーゼで拭きますので、多少圧迫感を感じることがあります。
  • 静脈麻酔の場合、採卵中は殆どの方は意識がありません。痛みが強い場合は、麻酔薬を追加します。点滴から麻酔薬を入れる為、一時的に腕に軽い痛みを感じることがありますが、すぐに治ります。

採卵後

  • 採卵の翌日に受精確認の結果をお電話にてお伝えさせて頂きます。胚培養士からご連絡させていただきます。
  • 帰宅後は、安静にして頂き、採卵当日の入浴はシャワーのみとなります。出血が止まれば翌日から湯船に浸かっても大丈夫です。

3. 卵子の確認と培養

採取直後の卵子

採取直後の卵子

採卵時に得られた卵胞液は、すばやく胚培養士が顕微鏡で観察して卵子を探し出します。確認された卵子は、すぐに培養液の中に移し入れ、培養器の中で培養を行います。2重にチェックして、卵子の見落としが無いようにしています。採取された卵子は、このまま約3~5時間培養します。採取された卵子は、卵丘(らんきゅう)細胞と放射冠(ほうしゃかん)細胞という2種類の細胞に包まれています。(右写真参照)

4. 優良精子の選別

精子

採卵日当日は、ご主人様に精液を採取して頂きます。採取された精液は、培養液を用いて遠心・洗浄・濃縮を行った後に、swim-up(スイムアップ)法と呼ばれる方法で運動精子が約100%の状態に調整します。この処理後の精子を用いて体外受精を行います。

採精についてご注意

  • 採卵日までの禁欲期間は、約2~3日前後が最適です。
  • 精液の状態は、体調によっても変化します。
    採卵が決定しましたら、ストレスを避け、規則正しい生活で体調を整えて下さい。
  • 採卵当日にご都合により来院出来ない場合には、ご自宅で採取して頂き、2時間以内にご持参下さい。
    また、長期の出張等でご主人様が不在の場合、予め精子を凍結保存しておく方法もあります。その場合は、事前に医師または看護師にご相談下さい。
  • お渡しする採精カップには、ご夫婦の氏名を油性マジックで容器の蓋と側面に必ずフルネームでご記入下さい。
  • 採取する際にコンドームを使用しないで下さい。
  • ご持参される場合に、カイロ等で加温したり、逆に冷却しないで下さい。
    精子は温度変化に敏感です。人肌の温かさが理想です。
  • 精液は専用容器に採取して頂きます。きれいに手を洗ってから採取して下さい。
    清潔な容器になっていますので、容器の中に手を入れないようにして下さい。
  • 採取したら、中の精液がこぼれないようにしっかりと蓋を閉めて下さい。

5. 体外受精

卵子が採れて精子の処理が終了すれば、いよいよ精子と卵子を受精させます。受精の方法には、一般体外受精法と顕微授精法とがあります。

① 一般体外受精法

精子と卵子を培養液の中で受精させる方法です。つまり精子と卵子自身の能力で受精させる方法です。
採卵日の午後に卵子の入った培養液の中に約20万/mlの濃度になるように調整した精子を混ぜ合わせます。
この混ぜ合わせる操作を媒精(ばいせい)と言います。ごく希に、ご主人様の精液の状態が正常にも関わらず、この方法で受精率が低いかあるいは全く受精が認められない場合があります。

② 顕微授精法

この方法は、顕微鏡で観察しながら、極細のガラス針を用いて精子1個を吸い込み、この針を卵子に穿刺して、精子を卵子の細胞質内に注入する方法です。(右写真参照)
成熟卵子と未熟卵子について
ここで、ご理解頂きたいのは、採卵できた全ての卵子が受精出来るとは限らないということです。卵子には、成熟卵子と未熟卵子があり、精子と受精できるのは成熟卵子のみです。顕微授精法の場合には、卵丘細胞を除去して卵子の成熟度を判定します。

左側の卵子の拡大写真では、時計の12時の位置に極体が存在します。これが成熟卵子の証です。右側2枚の卵子の拡大写真は、極体が存在しない未熟卵子です。このような未熟卵子は、精子と受精できないので顕微授精法に用いる事は出来ません。重要なのは、採卵数もですが、むしろ卵子の成熟度と言えます。

6. 受精の確認

媒精や顕微授精が終了すると翌日まで培養器の中で培養を継続します。
そして、翌日に受精の確認を行います。

受精している卵子では写真右側から1番目、2番目、3番目の写真のように卵細胞質に前核が確認できます。また、受精した卵子は、胚と呼び名が変わります。左側の写真では、卵細胞質内に前核が確認出来ませんので未受精と判定します。しかし、希に未受精と判定された卵子でも翌日に分割が確認出来る場合があります。また、受精が確認できた胚は、正常受精胚と異常受精胚に分類されます。正常な受精では、写真右側から2番目のように前核が2個確認できます。これは、精子の核1個と卵子の核1個が確認出来ている状態です。しかし、異常受精の場合には、右側の写真のように前核が3個以上確認されます。これは、受精の方法によって原因が異なりますが、一般体外受精法の場合には、1個の卵子に2個以上の精子が受精すれば異常受精となります。このような異常受精の場合、染色体の数的異常となりますので胚移植には用いることはできません。顕微授精法の場合でも、前核が3個以上確認される場合があります。これは、受精の過程での異常が原因でこのような事が稀に起こります。

7. 培養

培養する上で最も重要なのは、使用する培養液の選択と機器の精度管理です。
当院では、培養器の点検・洗浄・滅菌処理を定期的に行い、培養条件が一定になるように努めています。

更に、培養を行う上で重要なのが、間違いを起こさないシステムです。
多くの患者様の精子や卵子をお預かりしていますので、採卵から胚移植までの様々な段階で常に2重のチェックを行っているので、間違いが起こることはありません。またそのチェックの記録も保存しています。
患者様からお預かりした精子や卵子や胚は、学会から認定を受けた胚培養士が胚移植まで責任を持って大切にお世話させて頂きます。

8. 胚の評価と胚移植法

受精確認の翌日には、分割が始まっています。分割が確認できれば胚の評価を行います。
胚移植を行う時期としては、採卵後2日目か3日目に行う初期胚移植と採卵日から5日目に行う胚盤胞移植、さらに初期胚移植と胚盤胞移植を組み合わせた2段階胚移植など様々なバリエーションがあります。
どの時期に胚移植を行うかは、これまでの治療歴や凍結保存出来た胚の状態などを考慮し決定します。

① 初期胚移植

採卵から、2日目か3日目に子宮に胚を戻します。胚移植の前に分割した全ての胚について、当院のグレード分類により胚の評価を行います。
下の写真は、初期分割胚のグレード分類を示しています。グレードは、分割した割球の均一性とフラグメントという小さな分割の占める割合によって1から5までの5段階評価で分類しています。
初期分割胚(採卵から2日目あるいは3日目)のグレード分類

グレード1が最も良好でグレード5が不良胚となります。また、分割速度もグレードと同時に評価しています。
通常、採卵から2日目では4分割、3日目では8分割程度に発育している場合が平均的な発育速度となります。胚移植する数は、1個となっています。ご希望があれば、年齢やこれまでの治療歴によって最大2個までは移植可能ですので、2個胚移植をご希望される場合は医師にご相談下さい。
グレードに関して
胚のグレードは、妊娠の可能性と相関しますが、妊娠が成立した後は、胎児の発育や異常とは相関しません。また、グレードの高い胚ほど妊娠の可能性は高くなりますが、グレードの低い胚でも妊娠の可能性は十分にあります。グレードはあくまでも参考程度として下さい。
移植胚数に関してのご注意!
移植胚数に関しては、関連学会より原則1個ないし条件によっては2個とするようにという会告が出ております。当院におきましても、学会に加盟登録している施設として、この会告を遵守することにしておりますので、皆様のご理解をよろしくお願い致します。

② 胚盤胞移植

採卵から6日間(7日間の場合もあります)培養し、胚盤胞に発育したのを確認して凍結保存とします。近年、培養液の研究・開発が進み積極的にこの治療法が試みられています。下記の写真は、標準的な胚盤胞までの発育状態を示しています。胚移植の前に分割した全ての胚について、当院のグレード分類により胚の評価を行います。胚盤胞のグレード分類については、後に解説します。

胚の培養は、採卵から6日目(7日目の場合もあります)までとなっています。
現在、使用されている培養液や培養環境では、7日以上の培養には適していないからです。
また、全ての受精卵(胚)が胚盤胞に発育する訳ではありませんのでご理解下さい。
次に示しますように胚盤胞移植にはメリットとデメリットがあります。
胚盤胞移植のメリット・デメリットについて
メリット
  • 胚盤胞まで発育させることにより、途中で発育が停止した胚との選別が可能となります。
  • 生理的に子宮に着床する前の胚盤胞という状態に発育してから、子宮内に戻り着床しています。
  • 胚盤胞を1個移植することにより、多胎妊娠をほぼ回避できます。しかし稀ですが、1個移植でも1卵性双胎(双子)になる場があります。
デメリット
  • 胚盤胞へ発育する割合は、患者様によって異なりますが、平均すると40%前後です。
  • ある程度の数の受精卵(胚)が必要となります。
  • 1つも胚盤胞に発育しなかった場合には、胚移植が出来ません。

胚盤胞の評価法(グレード分類)について

胚盤胞についても、その発育状態に応じて胚の評価を行っています。下の写真は、胚盤胞のグレード分類を示しています。

胚の発育状態により1から6の6段階で評価しています。
1が胚盤胞になったばかりの状態で、6が最も発育が進んでいる状態といえます。胚盤胞では発育が進むにつれて胚自体の大きさが大きく成長します。

通常、採卵から4日目に桑実胚となり5日目に胚盤胞の3から4程度に発育し、6日目には4以上に発育するのが理想的な発育とされています。
また、胚盤胞では、発育の状態と併せて細胞の密集度についても同時に評価します。

胚盤胞に発育すると、大きく2つの細胞に分かれます、次の写真に見られる、透明帯に密接している細胞を栄養芽細胞と呼び、将来妊娠した際に胎盤となる細胞です。もう1つは内細胞塊と呼び、妊娠した際に胎児となる部分です。胚盤胞では先に説明した発育速度の評価に加え、これら2つの細胞の密集度によってAからCの3段階に評価しています。最も細胞数が多い状態をAと評価し、細胞数が少ない状態をCと評価しています。
尚、胚盤胞の発育が2以下では内細胞塊と栄養芽細胞の区別が困難な為、AからCの評価は行いません。

内細胞魂の評価:「A」
栄養芽細胞の評価:「A」
内細胞魂の評価:「B」
栄養芽細胞の評価:「B」
内細胞魂の評価:「C」
栄養芽細胞の評価:「C」
上の左側の胚盤胞写真では内細胞塊と栄養芽細胞ともに細胞数が多いので、共にAと評価します。対して、右側の写真では内細胞塊と栄養芽細胞ともに細胞数が少ないので、共にCと評価します。
例えば、5日目で胚盤胞の発育が「4」で内細胞塊の細胞数が多く、栄養芽細胞の細胞数も多い場合には、「4AA」と評価します。
また、胚盤胞の発育が「2」以下の場合では、内細胞塊と栄養芽細胞の区別が困難な為「1」または「2」と発育状態のみを評価します。
胚盤胞の評価としては、発育がより進んでいて、かつ細胞数が多い胚盤胞が移植出来れば、妊娠する可能性は高くなる傾向はありますが、過去に評価の低い胚盤胞を移植して、妊娠されている方々がいる為、100%グレードと妊娠が相関しているとは限りません。グレードはあくまでも参考程度として下さい。

胚移植の手技について

胚の評価が終わればいよいよ胚移植です。胚移植とは受精して分割した胚を子宮に戻すことをいいます。
胚移植はこれまでの治療の中で総仕上げと言っても過言ではありません。移植方法は膣から柔らかい胚移植用のチューブを用いて子宮内に移植します。痛みは殆どありません。移植は、約5~10分程度で終了します。

胚移植に関するご注意

  • 指定されたお時間にお越し下さい。
  • 移植は、膣から超音波診断装置を用いて、子宮の状態とチューブの先端を確認しながら行います。約5分から10分で終了します。痛みはありません。
  • 胚移植後は、移植用のチューブ内に胚が残っていないか確認します。
  • 胚移植後は、普段通りの生活で結構です。但し、重い物を持ったり、激しい運動などお腹に負担のかかることは、出来るだけ控えるようにして下さい。妊娠判定日に後悔されないような生活をして下さい。

9. 黄体補充法

胚移植後の胚がうまく着床する為には、黄体機能も重要です。黄体機能とは、排卵後の卵巣からの黄体ホルモン及び卵胞ホルモンの分泌機能を指します。この2種類のホルモンは、子宮内膜に作用して着床準備状態に調整し、着床後には、胚の発育を助ける作用があります。

黄体補充法としては、天然型プロゲステロン膣座薬や天然型プロゲステロンの筋肉注射や内服薬を使用します。これらの薬剤をどのように使用するかは、個々の患者様の状態を考慮して決定します。

10. 妊娠判定

移植後7~10日目頃に、ご自身あるいは外来にて妊娠判定を行います。検査は血液検査で行います。妊娠が成立したら、更に約8週間は黄体補充法を継続します。
体外受精・胚移植法は、多くのステップを確実にこなしていく必要があります。医師や看護師、培養士からの説明をよくお聞き頂き、お薬などの用法用量にお間違いのないようにご注意下さい。
これはあくまでも原則的なもので、患者様の状態によっては、前述と異なる場合もありますのでご理解下さい。実際の流れは、その都度スタッフがご説明しますのでどうぞご安心下さい。
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