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診療科・部局・センター

血管外科疾患について


血管は心臓より血液を全身へ送る動脈と心臓に戻る静脈に分類されます。

動脈の病気は動脈がふくらみ放置すると破裂してしまう動脈瘤と、血液を足や手へ運べなくなる動脈閉塞症が治療の中心です。
静脈は、深部静脈血栓症(足にできた血栓が肺に流れ死亡することもあるエコノミークラス症候群で有名)や下肢静脈瘤が対象となります。

腹部大動脈瘤 (Abdominal aorta aneurysm:AAA)

自覚症状がみられることは少ないため、腹部CTなどで発見されることが多く、動脈が局所的に瘤化(拡張)し、放置しておくと破裂してしまう病気です。
破裂してしまうと救命率は非常に低く、80~90%の方が亡くなると言われています。

当院では手術時自己血回収装置を用いており輸血を行うことはほとんどありません。したがって術後の回復も早くなります。
当院で本疾患を治療されるのは80歳以上の超高齢者でさまざまな合併症を有している方がほとんどですが、各分野の専門医の協力体制が整っており、厳重な術前・術後管理により皆さん問題なく回復されます。

また全身麻酔下で、大動脈瘤を人工血管に置き換える手術も施行しておりますが、症例によりましては大学病院にて大動脈ステントグラフト留置を検討させていただいております。

【Y型人工血管置換手術】

閉塞性動脈硬化症 (ASO:arteriosclerosis obliterans)

肥満、糖尿病、喫煙などの生活習慣を基に動脈硬化により下肢の動脈が細くなってしまう病気です。
50歳以降の壮年期男性に好発すると言われてきましたが、最近は女性も増加してきております。
動脈壁の粥状硬化が原因であります。

症状としては、冷感、しびれ、歩行時の痛み(間欠性跛行(はこう)などがみられます。閉塞が進行すると足(皮膚)の潰瘍や壊死をきたすことがあります。
食生活の欧米化、高齢化にともなって、80年以降、高い増加率でASOの患者さんが増えています。

現在の推定患者数は10万人ですが、やがては百万人(日本人口の百人に一人)に達すると言われています。
このような患者数の増加は糖尿病、腎臓病にもあてはまることなので日常生活にも注意が必要です。

写真1

写真2

腸骨動脈領域で閉塞しています。(写真2)
血管内治療(ステント【写真1】留置)により救肢できた症例です。
動脈硬化が進行すると、動脈が狭窄、閉塞し臓器へ有効な血流量を供給できなくなります。
動脈硬化が進行すると初期の場合は薬物治療やリハビリが中心ですが、病院を受診される方はすでに進行しており、常に切断の危機に面している場合が多く当院では積極的に血行再建手術を検討します。

血行再建手術には自身の静脈や人工血管を用いたバイパス手術や病変部位をカテーテルで拡張する血管内治療があります。
当院では通常のバイパス手術だけでなく、成功率が低いため通常はあまり施行されない足関節付近へのバイパス手術を積極的に施行し、成果をあげております。
血管内治療にはバルーン拡張術やステント術があります。

カテーテルの先端に風船のように膨らむバルーンがついており、血管がせまくなっている場所を広げるバルーン拡張術(PTA)、金属の針金でできた筒(ステント)を血管がせまくなっている場所に留置するステント術があります。
体にメスを入れず、レントゲン透視装置を使用し、局所麻酔で針穿刺のみで治療ができるため、体への負担が非常に少ない治療です。

通常、カテーテルを使った治療は、病変部が短く、完全閉塞になっていないものがよい適応ですが、当院では難しいとされる血管が完全に閉塞している部位や病変が長めの部位、細い血管の部位にも治療を試みています。治療が成功すれば、症状を改善させることができます。

間歇性跛行の症状では、歩行距離が伸び、安静時痛のある症例では、痛みの改善や壊死の危険を回避できます。
壊死に至っている症例では、壊死部分を回復させることはできませんが、バイパス手術やカテーテル治療で、血行を改善させることで痛みを軽減し、切断部位をできるだけ少なくするメリットがあります。

急性動脈閉塞

血栓が手足の血管を閉塞させ、放置すると壊疽に陥る病気です。急な激痛で発症します。
手術で動脈を切開して血栓を取り除きますが、すでに閉塞部位の血管が狭くなっている場合も多く、当院ではカテーテルによる血管拡張術も同時に追加し完全な血行再建に努めています。

閉塞性血栓血管炎(TAO:Buerger病 バージャー病、ビュルガー病と呼ばれます)

タバコをよく吸う壮年男性に多くみられる、下肢の中小動脈がだんだんとつまり、放っておくと足先から腐ってしまう病気です。
末梢動脈壁全層に炎症を認め、内腔の狭窄、血栓形成などにより動脈が閉塞して起こります。
症状として冷感、疼痛、間欠性跛行が出現し、進行すると壊死をきたします。
治療は第一に禁煙ですが、進行例では切断術の適応となることもあります。
当院では保険適応にて禁煙外来(毎週金曜日)も行っております。

下肢静脈瘤(Varix:バリックスと呼ばれます)

太ももからふくらはぎにかけての静脈にある弁がうまく働かなくなり、血液の逆流を生じて静脈瘤が発生する病気です。
長時間の立ち仕事や、女性の妊娠、出産後に静脈瘤が大きくなることがよくあります。
この病気は立ち仕事で足をよく使う人に多く、性差では女性に多く見られます。また、高齢になると増えるため足の老化減少のひとつの現れとも考えられます。

下肢静脈瘤という病気は子供を生んだ経験のある成人女性の2人に1人、約半数の方が発症する身近な病気です。
最近の調査では日本人の約9%の人に静脈瘤を認め、患者数は1000万人以上と推定されています。
足の血液が停滞して溜まり、足の静脈が極端に浮き出てきて目立つようになり、そのまま放っておくと、足のだるさやむくみ、かゆみや湿疹などの症状が出現します。
あしの筋肉がつる、いわゆる「こむら返り」もおきやすくなります。最終的には皮膚潰瘍、色素沈着にまで進行することがあります。

治療は弾性ストッキングなどの保存的療法に加え、当院では2010年から保険適応となった静脈瘤レーザー焼灼術を積極的に導入しております。
ストリッピング手術(血管内にガイドワイヤーを通して静脈瘤を抜去します)や硬化療法(静脈内に硬化剤と呼ばれる薬剤を注入し、血管を閉塞させて静脈瘤を消失させます)などを症例により併用しています。
レーザー治療によるメリットとしては、
  1. 体に与えるダメージが極めて小さい
  2. 傷口が少なく目立たない
  3. 日常生活への復帰が速やかに行なえる
ことなどがあげられます。

※静脈瘤レーザー焼灼術についてはこちらをご覧ください

下肢静脈瘤にもいろいろなタイプがあります。
基本的に良性疾患でありますが、一度専門医にご相談ください。

下肢に血液が溜まらないように普段から次のことに注意しましょう。

  1. 長時間の立ち仕事は避ける
    立ち仕事中は1時間の仕事に5~10分間は、あしを心臓より高くして休息しましょう。
    休息がとれない方は、足踏みをしたり、 歩き回ったりするのも効果的です。あしの筋肉を使うと、筋肉のポンプ作用で静脈環流がよくなります。

  2. あしを高くして休みましょう
    夜寝るときには、クッションなどを下にしき、あしを高くして休みましょう。

  3. 弾性ストッキングの着用
    立ち仕事や外出のときには、弾性ストッキングをはいてください。

  4. 下肢を清潔に保つ
    日頃からあしを清潔に保ちましょう。

深部静脈血栓症

体の深いところを流れる静脈に血栓(血のかたまり)を作ってしまう病気です。一般的に足が腫れて痛みを伴います。
肉ばなれや筋肉痛と思って放置する方が多いため注意が必要です。

この病気で最も怖い点は、血栓が肺に飛んで呼吸困難を来たし急死する肺塞栓症を引き起こすことがあることです。
全身どの静脈でもおこりうる、血栓でつまらせたことにより、足が膨れてきたり(むくみ)、違和感をおぼえたりします。
60歳以上の高齢者、術前後の長期臥床などが危険因子と言われています。最近では長時間の飛行機搭乗による、エコノミークラス症候群がよく知られるようになりました。

肺動脈を血栓が詰まられたことによる、肺塞栓症は致命的な病気です。欧米ほどではありませんが、日本でも増加傾向にあります。
当院では肺塞栓症を引き起こす可能性が高い場合にはカテーテルを用い血栓を肺に流れる手前でブロックする下大静脈フィルター(3cm程度の傘のようなもの)留置を緊急で施行します。病状が安定したら再びカテーテルで体内よりフィルターを取り除きます。
また発症経過などにより、抗凝固剤(ワーファリン、DOAC:直接経口抗凝固薬)内服、血栓溶解療法(静脈を詰まらせた血栓を溶かす点滴薬)も行っています。

また下肢静脈瘤はDVTの危険因子と言われており、健常者の約3倍の危険因子といわれております。
足の静脈にできた血栓がはがれ、血液に乗って流れ、肺につながる血管(肺動脈)を塞ぎ、全身に血液が流れなくなったり、酸素の供給ができなくなります。

【再回収型下大静脈フィルター留置によるカテーテル治療】

Raynaud(レイノー)症候群

四肢末梢の小動脈に発作性収縮が繰り返し起こることにより、手指が蒼白になり、冷感がみられます。
発作は寒冷刺激に誘発されることが多いのですが、二次性に膠原病、胸郭出口症候群などが原因となることがあるため鑑別が必要です。

透析用シャント不全

人工透析の方法にもいくつかありますが、一般的なのが血液透析です。
透析をする際は血液ポンプを用いて大量の血液を体外に引き出し、透析器に送るために、通常前腕部などに外科的にシャント(ブラッドアクセスや内シャントとも呼びます)を作成します。
このシャントが十分に機能しないと透析が出来なくなります。しかし週に2~3回の透析のたびにシャント血管は針で刺され、大量の血液がシャント血管の中を循環します。

シャント血管が細くなったり、やがて詰まってしまうことがありますが、この状態を「シャント不全」といいます。
人工透析に使用するシャントトラブルに対し手術による再建やカテーテルによる血管内治療、または両者を同時に行うハイブリッド治療を行います。
当院では腎臓内科と連携して治療を行っております。

【鎖骨下静脈狭窄に対してバルーン拡張施行しております。】

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